甲野一郎は、ひょんな事から、ほのかな恋心を抱く、クラスメートの乙山花子と二人きりで、一緒に登山に行きました。
前の日の夜は、明日が楽しみで中々寝付けず、目が醒めると約束の時間が迫っており、朝ご飯を食べる余裕もなく、急いで家を飛び出しました。
甲野一郎が、乙山花子との待ち合わせ場所に行くと、すでに花子が一郎を待っており、早速ふたりで山の頂上を目指します。
二人は、
山の頂上にある山小屋で名物の「山の頂き海の幸の盛り合わせ定食」を食べる予定でしたが、気が付くと道に迷ってしまい、何処を歩いているのかもわからなくなりました。
一郎は、空腹の上に、歩き疲れてヘトヘトです。
花子の言い分
「ちょっと休憩しようか・・・」
「そうね・・お腹も空いたし・・休憩しましょう」
「それにしてもここは何処だろうね?」
不安げな私を尻目に、乙山花子はリックからおにぎりを取り出して食べ始めました。
「あ~・・ずるいぞ! 僕にもおにぎり頂戴よ~」
「あら? 食べるもの持ってきてないの?」
「まさか、道に迷うなんて考えていなかったので・・・持ってきてないよ・・・」
「そう・・」
花子は、一人おにぎりをほおばっています。
「・・花子さん・・僕にもおにぎりを一つもらえませんか?」
「どうして??」
「いや・・・・・僕もお腹が空いてるもんで・・」
「大丈夫よ」
「・・何が大丈夫なの??」
「だから、貴方におにぎりをあげる必要が無いって言ってるのよ」
「え~っと・・・ 花子さんの言ってる意味がよくわからないのですが?・・・」
「貴方さっき「ここは何処だろうか?」って言ったわよね」
「はぁ・・? たしかに言ったよ??」
「つまり、下手をするとこの先しばらくは食べるものが無くなってしまうかもしれないでしょ?」
「ん~・・・そうかもしれないけど・・・だから????」
「だから・・って・・・まだわからないの?」
「いや・・・何を言いたいのかよくわからないんですけど・・。 とりあえず、僕もお腹が空いて我慢できないんですが・・」
「安心して・・・・・・・我慢できるから」
「いやいや・・???・・何を言ってるの??」
「花子さんだって、お腹が空いたら我慢できないでしょ?」
「そうね・・たしかにそうかもしれないわ・・・」
「でしょ?・・・・だからおにぎりをくれませんか?」
「でも私・・我慢できるわよ」
「?????」
「だから・・私は貴方の空腹ならいくらでも我慢できるって言ってるの!」
「花子さんは、僕が空腹で苦しんでいても、自分が空腹じゃないので、知ったこっちゃ無いと?」
「ええっ・・そのとおりよ」
不満げな私の顔を見て、
「じゃ・・貴方は他人の痛みや苦しみがわかるっていうの?」
「当たり前じゃないですか!」
「本当に??」
「わかるって言ってるじゃないか!!」
「じゃ・・聞くけど・・」
花子は一郎の目を見ながら、言葉を続ける
「私が貴方におにぎりをあげたら私はどうなるの?」
「えっ・・・・???」
「今度は私のお腹が空くじゃ無い???」
「いや・・言ってる意味が全くわからないよ・・?」
「ハァ・・・」
花子は深いため息をつきながら言葉を続けた。
「だから・・私のお腹が空くじゃ無い?」
「いや・・それはさっき聞きましたけど・・・だから、何が言いたいの??」
「だから・・貴方は他人の苦しみがわかるって言いながら、私が貴方におにぎりをあげて、私が空腹になって苦しむことになるのがわからないのか?・・って聞いてるのよ」
「いや・・それは・・・」
「それは何よ??」
「貴方は、私が空腹になって苦しんでもかまわないって言ってるのよ! 」
たたみかけるように花子が続ける
「つまり・・貴方は口先だけで他人の苦しみがわかるなんて綺麗事を言ってるのよ!!」
「・・・・・・もういいです・・・」
・・・一郎は、膝を抱えてうつむいてしまいました。
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さて、一郎と花子の会話を聞いてどう感じただろうか?
特に、花子の言い分についてどうだろうか?
「おかしい」と感じただろうか?・・
それとも「そらそうだ」と感じただろうか?
花子の言い分が間違っていると考える場合、若しくは、花子の言い分が間違っていないと考える場合・・・いずれにしても理路整然とその理由を具体的に説明することができるだろうか?
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実はこの話・・・いまから3年ほど前に作ったもので、何度か世間の目にさらしています。
自分で作っておいて何ですが・・・私には花子を論破できませんでした。
いや・・むりくりになら、論破できる かもしれませんが・・・
この話について、知り合いの女性から意見を言われました。
その意見があまりにも的を得ており、「花子を論破するよりも、もっと大切なことがある」と言うことに
男の端くれとして
気付かされ、その意見には考えさせられることが多かったので、再び「花子の言い分」を人目にさらします。
ちなみに、その知り合いの女性の意見を、要約すると
一郎は、
『起こるかもしれないトラブル』
を想定せずに、何の準備もしないで、山登りに行って迷子になった。
その時の女性の頭の中は
『何考えてんだ!こいつ!o(`ω´ )o』
って事だけで、
『お腹が空いたから おにぎりをくれ!』
と言う一郎に 『自分に対しての愛』が 全く感じられず
幻滅する!(−_−;)
おにぎりを与えない花子が 冷たい女性やと思うかもしれないが、その前に
『おにぎりを半分あげたい!』
と思わす行動をとらなかった 一郎に問題があるのである!d(^_^o)
『花子が優しくない!』
という前に
「沢山歩かせて 道に迷わせて 花子を不安な気持ちにさせて申し訳ない!」
とゆう言葉があれば、花子はおにぎりをあげる事を拒みはしなかっただろう!(−_−;)
『家族と同じように愛されて当然』やと思っている一郎!
夫は妻に『自分の母がくれる愛情』を求める!
夫はいつまでも 夢を追い!
そして、
妻はますます強くなってゆくのである!
ん・・・・・
男として、とても耳が痛い・・
きっと、そう感じる男の人も多いと思う。
そして今更ながらに、この話が
「男と女」という話だけではなく、人と人との繋がり方としても考えるべきところが多いのではないか?
ということに気がついた。
諸々と反省し、もっと大きな男に、一人前の男・・
いや!・・一人前の人に、職業人となれるよう、もっとできることがあるはずだ。
頑張ります
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