少し前の話ですが、
ある人が、あるサラ金業者から「貸金請求」の裁判を起こされました。
自分で作った答弁書を提出された後に、やはり自分では裁判を行えないと考えたのでしょう・・当事務所へ相談に見えられお話を伺うと・・・
「どうも相手方の計算がおかしい」
と言うのです。
よくよくお話を伺うと、
「このサラ金から、お金を借りたのも、返せていないのも事実だけど、一部に借りた記憶のない借入金がある」
と言われます。
そこで、私が被告側代理人として裁判を行うこととなりました。
詳しい内容は言えませんが、かいつまんで言うと
複数回借り入れを行った
途中で返せなくなった
というもので、
「借りたのは事実」
「返していないのも事実」
「消滅時効の援用はできない」
ということなので、
どう考えても負ける裁判です。
とはいえ、訴状の内容で争うべき点が三つありました。
一つ目の争点は、
借り入れを行った回数とその方法です。
二つ目の争点は、
期限の利益の喪失した日です。
三つ目の争点は、
返済した総額です。
まぁ、二つ目と、三つ目の争点については残念ながら負けましたが、一つ目の争点には勝利しました。
ん??
どういうこと・・って思うでしょ?
架空の借り入れ
原告(貸金業者)の主張によると、
原告(貸金業者)と被告(依頼者)との間の取引で、借り入れを行ったのは、7回ありました。
しかし
被告(依頼者)は、4回目以降の借り入れについての記憶がありません。
ひらたくいうと、「4回目以降の借り入れは、原告(貸金業者)のでっち上げ=架空請求」だということです。
1回目~3回目までは、被告の通帳に振り込まれる形で貸付けがされていましたので、こちらも認めていますが、4回目以降の貸付けについては、被告の通帳に記載がありませんでしたので、「それを立証してね」と主張したところ、
原告(貸金業者)は、この4回目以降の貸付けは通帳に振り込む貸付け方法ではなく、原告のATMを利用した貸付けであると主張してきました。
しかし、被告には原告会社のATMを使った記憶がありません・・・・
ということで、裁判の中で「原告の主張する取引の一部を否認」しました。
これにより、裁判は6回の期日を重ねることになります。
コンピューターは絶対か
裁判所はコンピューターから吐き出されたデーターって、何故か盲目的に信用する傾向にあるように感じます。
例えば、交通違反(スピード違反)の裁判で、オービスなどの「速度取り締まり機械」が計測したデーターは、ほぼそのとおりと認定されていることからもわかります。
こちらは、本件貸金請求事件でも、被告準備書面を6回(総ページ数39頁)提出し反論しましたが、訴訟中「原告の主張が全て正しい・なぜならコンピューターで管理されたデーターが証拠として提出されているから」というニュアンスで進んでいました。
途中何度か裁判所からの和解勧告があったのですが、原告被告とも折り合いがつかず、結局、判決となりました。
判決ですが、結果として「借り入れを行った回数とその方法」については、こちら(被告)の主張が全て認められることとなり、原告の請求は一部だけが認められ、一部は認められませんでした。
まぁ・・
その後、原告も被告も控訴しなかったので、この判決は確定したわけです。
つまり
貸金請求を求める貸金業者が起こした裁判で、原告である貸金業者側が、被告に貸出したと主張する金員の一部が否認された
という、正直・・・なかなか珍しい判決だとは思います。
もっとも
原告の請求が一部否認されたとはいえ、全体から考えると当たり前に敗訴ですので、原告に支払わないといけません。
ん・・・
一部棄却されたものの・・・裁判をやっていた間の遅延損害金とか考えると・・・相手の元々の請求額に近くなる・・
結局、こんなに争ってよかったのか?・・悪かったのか?・・考えさせられた事件でしたが、依頼者は結果に納得してくれたのでよかったと信じたい。
何が
依頼者の利益とはなにか?・・裁判事務は難しい・・
まぁ、裁判事務に限らず・・
依頼者が何を求めているのかを、最初にしっかりと話し合い、要所要所で報告と確認を行わないと駄目だと強く感じた事件でした。
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