ところで・・いわゆる過払いバブルと呼ばれる現象もはじけてしまったようです。
•思い起こせば、私が司法書士として独り立ちした・・今から19年程前に、債務整理をやっている司法書士はかなり変わっていました。
•かくいう私も、変人だったようで・・どういう訳か、気が付くと開業後まもなく「債務整理」に関わるようになっていました。
•勿論、私が債務整理に関わりだす遙か昔から、一部の弁護士や司法書士がこの問題に精力的に関わり、被害者の救済の為に、真摯に活動されていました。
•それでも当時は、債務整理を行う弁護士はそれほど多くなく、司法書士に至ってはほとんど関与していませんでした。
•また、当時の司法書士にとっての債務整理業務は、今からは信じられないほど劣悪な環境の下で関わっていました。
•代理権の無い時代ですし、債務整理にたずさわる司法書士も数えるほどしかいない状況では、サラ金に電話しても「ハァ~ン!!」と凄まれることは日常でした。
•当初はおもに、「自己破産」の書類作成によって債務整理に関与していましたが、あるとき「過払い」という問題があり、弁護士がこの問題について裁判をしているらしいということに気が付きました。
•その後、「過払い」について勉強をして、過払いの返還を求める裁判を行う事となるのですが、私が初めて過払いの返還を求める裁判を行ったのは平成10年です。
•この時は、たしか神戸のサラ金業者を相手に提訴しました。
•この当時には、私の周りの司法書士は誰もこの裁判をやっている人も無く、参考にするような訴状もなく、一から自分で考えて訴状を手探りで作成しました。
•ようやく完成した訴状を地元の簡易裁判所に提出したのですが、まもなく書記官から電話が掛かってきて
•書記官「すみません・・この裁判の管轄についてなんですが・・」
•私「はい・・・・??(^^;)」
•書記官「この事件が被告の住所地ではなくて、当裁判所に管轄があると考えられた根拠は何でしょうか?」
•私「は・・・いや・・本件に関しましては、不当利得の返還請求なので、持参債務だと考えています。・・よって・・義務履行地にも管轄があると考えていま
す。」
•書記官「・・・民事訴訟法5条・・ですね」
•私「そうですね」
•書記官「わかりました。それでは事件をお受けることとします」
というところから始まりました。
•あ・・ぼくのことを・・試しよったね・・
と感じたことは言うまでもありません。
•裁判の当日・・これにしても書類作成での関与ですから、本人には原告席に座って頂き、私は傍聴席からハラハラドキドキと裁判を見守るしかありません。
•すぐに司法委員と別室に移動・・となりまして、司法委員に御願いして別室に入れて頂く事ができました。
その際の状況は
•司法委員「・・・原告は・・お金を借りられたのですよね・・」
•原告「・・・・」
•司法委員「・・・お金を借りて、返済された・・・」
•原告「は~・・・」
•司法委員「で・・返済したお金を返してほしい・・ということですか??????」
•原告「え~っと・・・」
•ここで司法委員が、私に説明を求めてきました。
•司法委員「貴方が、司法書士さん??・・・どういうことですか??」
•私「はい。貸金業規制法において・・・みなし弁済・・・利息制限法・・・」
と・・・一から説明しなければなりませんでした。
•※ 初めてこの裁判を提訴したときに第一回期日では裁判官も理解しているようにはみえませんでした(つまり・・この地元の簡易裁判所では、それまでに、このての裁判がされていなかった)。但し、2回目の期日になるとさすがに裁判長はこの裁判の意味を理解されてましたが、司法委員は相変わらず理解されているようには見えませんでした。
•その後も、弁論期日において、裁判長が傍聴席に温和しく座って微笑んでいるこちらに尋ねてくるので、小声で答えたり、ジェスチャーしたり・・(笑)。
•時には、被告席から「お前は誰やねん」と街金の社長から凄まれたり・・・最近の司法書士になった人からみれば、とても想像できないでしょうけど・・・笑い話のような状況でした。
•そして極めつけは、債務整理業務では司法書士報酬が未収になることも当たり前の状況で、一時期は未収が普通乗用車一台分にもなった時期もありました。
•それでも債務整理を続けていたのは「被害者の救済」を掲げていたからです。
•「お金を借りた人間が被害者なの??」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、あの当時の状況を知っている人間からすると、間違いなく彼らは被害者であると断言できます。
•その後、同じ志をもった仲間が次第に増えていき地元での定期的な無料相談会が開催されるようにもなりました。
•さらに時が流れて・・「債務整理が金になる」と考えた弁護士や司法書士達が、堰を切ったように債務整理になだれ込んでくることになるのですが、その善し悪しをどうのこうのと言うつもりはありません。
•ただ・・「過払いバブルで弁護士や司法書士がボロ儲けした」という、何とも嫌や言い方がされますが、そんなバブルがあっても無くても、それがはじけてもはじけなくても関係無く、真摯に「被害者の救済」の為に活動している弁護士や司法書士がいるのだとということを知っておいて頂きたいと思います。
•そしてこれからも本番だよね。
•債務整理でお困りの皆さまが、被害者救済に真摯に取り組む弁護士又は司法書士に巡り会えますように・・少なくとも、テレビや新聞の折り込み広告をしているようなところには、依頼されないほうが良い事もあるのかもしれません(笑)。
•ところで、上のお話の中で書いた、私が初めて行った「過払いの返還請求」の裁判なんですが、途中から(たぶん2回目の弁論期日前に)相手方のサラ金業者には弁護士が代理人に就任しました。
•その結果、今では考えられないでしょうが、「みなし弁済」を徹底的に争われることとなり、提訴後約1年間にわたって戦うこととなるのですが、最後はこちらの言い分を認めるかのような被告準備書面が提出され和解の申入がありました。
•そこで8回目の口頭弁論の期日において、別室での和解の話合いとなり、ラウンドテーブルから少し離れた箇所でしたが、その場に同席させて頂く事はできたのですが・・・
•最後の最後で、原告が相手方弁護士にうまく丸め込まれて、請求額よりもかなり低い金額で和解してしまうこととなりました。
•まさに、がっぷり四つで土俵際まで追い詰めたところで、行司に見えないように、足を踏みつけられて、そのまま強引に共倒れにされた・・という感じでしょうか・・
•私としましては、傍聴しながら「あかん・・あかん・・つっぱねろ・・」と言葉にならない声を心で叫んでいたのですが・・・あの時から・・裁判において代理権の無い悲しさを痛烈に感じていました。
•簡裁代理権を取得した現在でも、地方裁判所の管轄では司法書士に代理権はありませんので、あの当時と同じ悲しい状況となりますが、あの当時の事が今となっては良い経験となっています。
•何にしても、あの時には「弁護士恐るべき」・・と言うよりも・・「弁護士のくせにやることがずるいぞ~」と酷くがっかりしたことも覚えています。
•実は、それから8~9年後に私が簡裁代理権の研修を受講したときに、あの弁護士が講師で登壇されましたので、
•心の中で
「おまえか~」
っと、叫んだことは誰にも内緒です。
•それで・・講義の後で、その弁護士のところに行き、
•「先生・・質問なんですが、職業上の倫理としてやってはいけない事でも、それがクライアントの利益になるのであれば行うべきでしょうか?」と言うようなこ
とを聞いてみました。
•勿論、あの時の事を根にもって・・・言っているのではありません。
•あくまでも一般論としてお尋ねをしたわけです
•弁護士は
•「倫理上問題のあることは、その旨をクライアントに説明を行いやるべきではありません」というようなことを回答されました。
•それを聞いた私は
•「ですよね~」
と微笑みながら、その場を軽やかに後にしたことは言うまでもありません。
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