最近のニュースで、ヒトスジシマカを媒体とする「デング熱」や、マダニを媒体とする「重症熱性血小板減少症候群(SFTSウイルス)」やら、何やら聞き慣れない伝染病の症例が日本各地で確認されています。
ネットの噂では「どこかの国が意図的にウイルスをばらまいている」などと言う人もいたりするようですが、そこらへんはちょっと横に置いといて・・・
一説によると、世界で一番危険な生物は、様々な病原菌を媒介する可能性のある「蚊」だそうです。
まぁ、いずれにしても虫とかに刺されない(かまれない、食われない)ように気をつける必要がありますね。
「デング熱」や「重症熱性血小板減少症候群(SFTSウイルス)」も大変な伝染病ですが、それよりももっと深刻な伝染病に罹患してしまったために行政処分により隔離されてしまう場合があります。
そういう伝染病などで隔離された人が、遺言をしたいと考えた場合についてのお話です。
伝染病隔離者の遺言
伝染病に罹患してしまったために、隔離されている場合に行う遺言の方式について、民法第977条に定めがあります。
どんな場合に行えるのか?
伝染病のために行政処分によって交通を断たれた場所にある者である場合に行うことができます。
※ 遺言者が、その他の行政処分によって交通を断たれた場所にある者(刑務所)、さらに暴動や洪水などのような事実上の交通遮断が生じたような場合にも適用されるかは注意が必要
やり方
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警察官1名、及び、証人1名以上の立会いが必要(注1・注2)
(注1)・・証人には欠格事由(未成年者・被後見人・被保佐人・推定相続人(及びその配偶者)・受遺者(及びその配偶者)・直系の血族)があります。
(注2)・・警察官は巡査でもよいとする説もありますが、警部補以上の人に依頼するのが望ましい。 -
遺言者が、遺言書を作ること(注3)
(注3)・・遺言者の自筆ではなく代筆でも良いが口頭遺言は許されません。
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遺言者、筆者、立会人、証人が各自遺言書に署名捺印すること(注4)
(注4)・・これらのうち署名捺印ができない人がいる場合には、立会人または証人がその事由を付記しておく必要があります(つまり、署名捺印ができない人でも証人となりうるということです)。
確認
民法第977条の伝染病隔離者の遺言については、家庭裁判所での確認の審判は必要ありません。
その他の注意点
伝染病隔離者の遺言をした人が、普通の方式によって、遺言をすることが出来るようにになった時から、6ヶ月間生存するときは、伝染病隔離者の遺言は、効力を生じません。
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ところで、
よくよく考えてみれば、伝染病で隔離されていたとしても、文字が書けるのであれば、いわゆる「自筆証書遺言」の作成ができるのであるから、伝染病隔離者の遺言をやらなければならないケースを考えると、結局「伝染病で隔離されている人」で、かつ、「文字が書けない人」の場合しか利用するときが無いような気もしますが、それでもこの条文が必要であった時代があったということに思いを寄せる今日この頃。
まぁ、もしかすると何時の日にか、このお話が役に立つ日がきたら・・こういう遺言もできますよと思いだして頂ければ幸いです。